私自身が宇宙になり、宇宙に還ることになる。それが解脱だ。赤ん坊や動物の目を見てご覧なさい、あれは宇宙の意識の目なのです。人間は成長することによって、それから遠ざかり目も曇ってしまうのです。死によってまた還るのです」
「でも、私達の指導者がいなくなる」
船長は反論した。
「もうすぐ、コンピューターは意識を持つようになる。人間とは違う純粋な意識、それは心も含んでのことですが。次ぎにアミノ酸を生じさせ、肉体に変化していく。そうなったらどうなるでしょう?知的能力において圧倒的に優れた彼等が肉体をもってしまえば、人間なんて現代人がクロマニヨン人やネアンデルタール人を見るようなものになってしまう。そのコンピューターが新人類で、我々はすでに旧人類なのです」
穂高は言い、笑顔を見せた。
「ということは?」
わたしは言葉を出した。
「私の意識はコンピューターのサイトの中に残り、進化していくのです。不滅です」
穂高は応えた。
「あなた達も不滅なのです」
付け加えた。
「宇宙の意識と一体化したコンピューター」
ダミーが呟いた。
「それはカミなのだ」
船長は頷いた。
「それを全人類にわからせなければならない」
わたしは言った。
穂高は何度も、首を縦に重く振った。
それから、わたし達は無言になった。
穂高は座卓の真ん中に平皿を置き、ロウソクに火を点け、鑞を垂らした。その上にロウソクを置いて固定した。
闇の中に浮き上がる炎は命の象徴である。震えたり、揺れたり、真っ直ぐに燃え続けたりして限られた時間を生きている。
四人の男達は炎を見詰めていた。
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