私が呼び出せばいつでも現れ、寄ってくる、私以外の人には見えないけど」
「死んだのではない。形が霊魂に変わっただけなんだな」
わたしが言うと彼は頷いた。
おかしいな?と、わたしは考え直した。
オカメインコを玄関間の鳥かごの中で飼っていたのは穂高である。週に一度部屋の中で放ってやったのも彼だし、風邪で寝込んだときプラズマ状態になった鳥が肩と胸に止まった話をしたのも彼である。
わたしは彼にその話しをした。
彼は頷きながら、自分は彼の分身なのだから共有部分はいくらでもある、と笑って答えた。
穂高が次のような話しをした事をわたしは思い出した。
オカメインコの夫婦は十年あまりも穂高の家で飼われていたが、雛に返す経験も見聞もしていなかったので、卵を産んだとき、どうして良いのかわからず放置していた。
穂高はその卵を電灯の熱で十日間温め、超音波装置を使って胎児になっていく状態を画面で観察した。魚、両生類と続き、系統発生の系譜でほ乳類の形がなく、両生類から恐竜、鳥類へと進化したことを確認した。レーザー光線で卵の殻を切り、雛を出してやった。お湯に浸からせて体を冷やさないようし、ヒマワリの種も砕いて与えた。
彼は産婆の役と母親の役を果たし、喜びが大きかった。
これほど繊細な男があれほど大胆なことに取りかかっている。
繊細さと荒々しさ、剛胆さは裏腹なのだ、とわたしは後に理解した。
終章
穂高が無言で、命を殺していた。
ナイフで、鯛の頭頂を二三回叩いて切り込むと、鯛の意識が抜ける。腹を割き、アラを抜く。ナイフを刺し込む時、妙な重圧感が掛かっている。
五十センチほどの鯛が鱗を光らせながら、板の上に無造作に投げられていく。尾びれを振るわせ、撥ねるのもいる。
船の振動がその上に加わる。
船首の先に、夕陽が落ちていく。
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