「本人の悔悛と努力です」
「時間がかかりますね?」
「かかります。あなたにもお願いします」
「医者は彼女は幼い頃からてんかんの持病があり、それが事故が引き金になったのではないかとも言っていますが」
わたしは尋ねた。
「そんなことはありませんが、私と同じように予知能力がありました。離婚した主人は農家の生まれで、あの娘はそこで産まれたのですが、七、八歳の頃、彼女は家が火事になって丸焼けになる夢を見たと言いました。私達は気にもとめていませんでしたが、半年後に納屋から火が出て、家が丸焼けになりました。中学生の頃、友達が無縁仏の傍に生えていた柴の葉を取ってきたと言うので、娘が事故に遭うよ、と言うと、友達は三ヶ月後に車に撥ねられました。その点では少し変わっていました」
病状が回復したのだろう、彼女の視線も語調も強かった。
わたしは彼女の顔に、香織を探していた。目と鼻が似ていて、どちらも、白目が緑がかっていた。それは気が立ちやすい性格だと何かの本で読んだことがある。
「こんな事もありました。末の妹の結婚式、披露宴を、新郎の家で開いている時でした。皆に御膳が回って食事をしているとき、八歳だった香織がいきなり、爺ちゃんの御膳が無いよ、と言い始めたのです。爺ちゃんは亡くなっておらんよ、と言うと、ほらそこに坐っとるやん、と、誰もいない末席を指したのです。そこには一人分の席が設けてありましたが都合が出来て来られなかった人でした。私は彼女をひっぱていって、口に出さないように諭しました。幼い頃から、燗が立ちすぎて怖いところがありました」
彼女の言葉に標準語が多いのは、気が張っているせいだろう。
「私は付きっきりで面倒を看てやりたいのですが、私もまだ本当に病気が良くなっていないので」
彼女はわたしの目を見詰め、出来るだけのことはする、と、わたしは頷いた。
第十六章
穂高は声を潜めていた。
「ヒットラーは売れない絵描きでした。ユダヤ商人に馬鹿にされながら絵を買ってもらい、
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