ブログ - 20200707のエントリ
昨日の夕方は、雨の降る中、傘をさして山のほうに散歩に出た。九州北部全体に大雨注意報が出ていて、氾濫して家を埋めた川水がテレビに出ていたが、家の中で、じっとしているなんてたえられない。山道に入る頃、顔見知りの後家さんが町道の枯葉をカマでとりのぞいていた。
声をかけると、一昨日と同じく、山水が家に流れて来るのが怖い、とこたえ、腰を曲げて、いそしんでいた。八十に近いが腰も曲がらず、顔もくずれず、可愛い顔をしている。そのあたりは主人をなくした後家さんが四軒に住んでいる。
(男の人がいれば助かるんやけど)彼女が言ったので、(ぼく、オトコです)と言いかけて、笑った。
それで、帰宅すると、酎ハイを飲みながら、スマフォのユーチューブで、演歌を聞きはじめた。若い頃は欧米かぶれでベートーベンやオールディーズをきき、演歌などは嫌いであったが、今は、聞きほれるようになった。島倉千代子、森進一、ちあきなおみ、青江三奈などが宝箱の中に生きている。自分の青春時代がもどってくる。老男のわびしい今と青春が重なり合って、カクテルのような豊潤な味をだすのである。笑い、涙し、杯を、独り、重ねる。
森進一の(港町ブルース)の歌詞に、(明日はいらない、今夜が欲しい)というセリフがある。明日はないに等しいわたしは、(今夜が欲しい)と想いながら、八時には布団の中に倒れ込み、しばらくあの世に逝くのである。