(土から生まれ、土に帰る)
という言葉が思い浮かんだ。
(だけど、カボチャが腐って死ぬことには意義がある。腐った体から種を出し、それを養分にして子供に与え、育てていくのだ。カボチャが腐らなければ種は成長することはおろか外界に出ることも出来ない)
次の日は日曜日だった。
闇が降りはじめた頃、わたしはバイクに跨った。
闇の中での活動は、昼間とはちがう興奮をわたしに与える。
その夜、わたしは学生区をまわり、午後十時頃までを計画していた。授業を終えてアルバイトが始まるまで部屋で過ごす者、寮生活がいやになってアパートやワンルーム・マンションに越して来た者、自宅通学からそれらに変わった者、暇で部屋で過ごしている者など、三百件近くもノックをして回れば、五件は契約が取れるはずだ。
国道に出ると、車がめずらしく混んでいた。
車のエンジンと行楽帰りの家族の興奮が、路上を占めていた。
狩りに出かけるわたしの興奮がそれに混じり、ヘッドライトの明かりが祭りの気分を盛り上げていた。
苛立った車が左折して裏道に入り、列から抜け出ていった。
わたしはゆったりとバイクを走らせていた。
城山トンネルの先まで、車は渋滞していた。
こんな渋滞を見たのは初めてだった。
先で交通事故が起こったのか、異変が起こったのかわからない。
並んだ車の窓の先に目を向けると、子供や若い主婦や若い男女たちが浮かれ顔でしゃべっている。ポップ・ミュージックもガラス越しに聞こえてくる。
この先に惨劇が待ち構えていたとしても、いや、そんなことはあって欲しくないが、引き返すことは出来ないのだ。何十メートル先で道路が分断され、抜け落ちて谷になっていて、車の列の全員が奈落の底に落ちていかないとは限らない。
バイクは城山トンネルの中に入った。
バイクは車の列と歩道の路肩に挟まれ、身動きが出来なくなった。
私はバイクを止め、左足を路上につけて体を安定させた。
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