ていたせいか温和で優しかった。
「仕事熱心が裏目に出たんですよ」
彼はわたしを庇ってくれた。
「この仕事はね、難しい人は飛ばして、また、来ます、と言ってどんどん次に進んでいったほうが良いですよ。難しい人は時間を置いて、また行けば良いんですよ」
統括係長は続け、彼の表情はどんな場合でも厳しくならなかった。
「心配しなくて良いよ。こっちは三人だし、いざとなったら警察に頼む」
副部長は言った。
わたしは両隣に副部長と統括係長を置いて、ラーメン屋の昨日の椅子に座っていた。
座ってから、副部長はわたしに着ていたハンコートを脱ぐように指示し、わたしは従った。(こんな礼儀も知らないのか?)という苦味を表情に走らせた。
午後三時頃だった。
「この度はこの男が不躾なことを言いまして、まことに申し訳ございませんでした。管理職として深く、お詫び申し上げます」
副部長は頭を下げ、先頭を切った。
トラブルの処理に慣れていて、堂に入っていた。
「どうか、お許しくださいませ!」
係長は声を張り上げた。
副部長はわたしのわき腹を肘で突付いた。
「どうかお許しください!」
わたしは機械仕掛けの人形のように頭を下げ、叫んだ。
大声を出すことで、元気が出てきた。
こんな時に不思議な感じがした。
わたしは単なる物質になっていた。
「言うとっけどね、俺は金が目当てやないけね。金なら、ほら、腐るほどある」
男はカウンターの傍に立っていて、レジスターの下の引き出しの中から丸く膨らんだ財布を出し、私たちの目の前に見せ付けた。
財布は布製の長いもので、紙幣を横に折って詰め込んでいるようだが、丸い膨らみが不自然だった。横に折って束ねたとしても、紙幣がそんな形になるはずはない。
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