も友達がいっぱいおる。KTSの記者も知っとるんよ。彼らはいつも俺たちに電話をかけてきて情報を欲しがっとる」

街宣カーの男は言った。
 わたしは事の重大さに再び気づいた。
「どうしたらいいんでしょうか?」
「それはあんたが考えることたい」
副部長の質問に男は答えた。
「もう、良い。お前達の顔は見たくない。ただし、わたしは部長の自宅とKTSに街宣カーで押しかけ、市民の皆さんに訴えます」
俳優みたいな男は言った。
「それには警察の許可がいります」
副部長はすかさず返した。
警察の名前が出てか、相手側は黙り込んだ。
「お前の顔だけは二度と見たくない」
男はわたしに言い、わたしは黙ってその言葉を受け止めた。
私たちは詫び、退去した。
それから、わたしはこの事件が大問題に発展するのではないかと、怯えて仕事を続けた。
ところが何週間たっても街宣カーはやってこなかったし、彼らからの接触もなかった。
「二回目で金を取りきらんかったら、彼らはあきらめる。無駄なことだとわかるからな。会社が対応するから安心して仕事をして下さい」
係長はある時わたしに言った。
次の内容を後に付け加えた。
(副部長は男に何度も、電話を入れ、許しを乞うた。
十回目で男は折れ、「わかった」と応えた)
「シュウー」と、空気を圧縮する音が耳に伝わってきた。
くべられた竹の中で空気が膨張し、勢いよく放たれている。
爆発寸前の危機感を覚え、身構えたが、爆発は起こらなかった。
膨張した空気は抜けていったのだ。
わたしの足元で、焚き火が小さくなって燃えていた。燃えた後のオキビが赤く輝いていた。黒ずんたり、明るんだり、輝きを緩やかに強めたり弱めたりしている。
 
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